ファミコンのロールプレイングゲームなどに搭載されているセーブ機能、これはバッテリーバックアップと呼ばれる技術で、カセットに内蔵されている電池を使ってセーブデータを保持する仕組みになっており、電池が切れてしまうとセーブデータは消えてしまいます。
ジャンク屋さんなどで購入したファミコンカセットでも、割と普通にセーブできちゃったりすることが多いのですが、やはり 20 年以上も前の機器ですから電池切れの不安は残ります。
今回はセーブができなくなったファミコンカセットの電池を、なるべく安く、なるべく便利に交換してみようと思います。
目次
準備するもの
はじめにファミコンカセットのバッテリーバックアップで使用されている電池をご紹介します。
カセットの種類によっては電池の位置や向きなどが異なるかもしれませんが、基本的に写真のようにコイン形リチウム電池 CR2032 が搭載されています。
電池は金具で固定されており、電池と金具はスポット溶接されているためハンダで取り外すことはできません。
スポット溶接を無理やり剥がすことはできますが、電池と金具をどうやって再び溶接するかが問題となりますし、電池に金具を直接ハンダ付けするのは破裂などの恐れがあり大変危険です。
それではどうするかと言いますと、タブ付きコイン電池という、あらかじめ電池に金具が溶接されている商品を使って基板に接続されている金具ごと交換するのが一般的です。
しかしながら、タブ付きコイン電池は普通のコイン電池よりも値段が高いですし、良く分からないメーカーのものもあります。また、在庫の回転率が低そうなのでいつの時代の電池なのかも怪しいところです。
そういうわけで以下のようなものを準備しました。
ダイソーのコイン形リチウム電池 CR2032
三菱のコイン形リチウム電池 CR2032 をダイソーで購入しました。
写真の商品、ダイソーだと 2 つセットで 100 円ですがセリアだと三菱の電池は 1 つが 100 円となっているのでご注意ください。
ダイソーのハンダ吸い取り器
基板から金具を取り外すときにハンダ吸い取り器を使うと綺麗に取り外すことができます。
これもダイソーの商品 (200 円) ですが、問題なく使えていますし、非常に便利な商品です。
かつてダイソーに置いてあった紫色のハンダ吸い取り器はハンダが詰まりやすかったのですが、この青色のハンダ吸い取り器はその点が改善されているように思います。
マイナスドライバー
ファミコンカセットを分解するときに使います。
カセットの上部にあいている穴に差し込むので、先端の幅は 6mm 以下のものが良いです。
先端の厚みは薄いほうが差し込みやすいですが、少々厚くてもそれほど問題はありません。
CR2032 電池ホルダー
さて、肝心の部品がこれです。
電池ホルダーを使用することでコイン電池を基板に固定できますし、電池が切れたときは簡単に交換できるという寸法です。
壊れたマザーボードから取り外した電池ホルダーでも試してみたのですが、背が高すぎて収まらず、結局、Amazon で 10 個入りのものを購入しました。
uxcell というお店が Amazon で販売している商品なのですが、電池ホルダーの足が折れやすい商品とそうでない商品の 2 つがあるようなので、レビューを見て安全そうなほうを購入しました。
ファミコンカセットの電池を交換する
それではファミコンカセットの電池を交換しましょう。
今回のターゲットは名作ロールプレイングゲーム「ファイナルファンタジー 3」です。
かなり長時間のプレイが必要となるこのゲーム、物語終盤での電池切れによるセーブデータ消失は避けたいところですね。
まぁ、当時、二度とラストダンジョンはやりたくないと思ったものですけれど…。
早速、作業を開始していきますが、実はファミコンカセットの分解という工程が最初にして最大の難関です。
ファミコンカセットを分解する
ファミコンカセットにはネジなどが使われておらず、内部でツメが引っ掛かっているだけなのですが、無理にこじ開けようとするとこのツメがすぐに折れてしまいます。
正しい分解手順があるわけではないので基本的には無理やりこじ開けるしかないのですが、今回はうまく分解することができましたのでその方法をご紹介します。
絶対にツメが折れない方法というわけではありませんので、その点はご了承ください。
あらかじめカセットの内部がどうなっているかを知っておいたほうが作業しやすいと思いますので簡単に説明しておきます。
ここではカセットの表面、つまりアートワークが貼られているほうを上蓋、裏面の注意書きが貼られているほうを下蓋と呼んでおきます。ツメは上蓋についており、上に 2 箇所、横に 2 箇所です。
端子側から見るとこのようになっており、上蓋のツメが下蓋にガッチリと噛む仕掛けになっています。
無理にこじ開けようとするとこのツメがパキッと折れてしまうというわけです。
今回は横のツメを先に外してから、上のツメを外すという手順で作業を行います。
それでは、実際にカセットを分解していきます。
まず、カセットの端子側を指で上下に広げるようにしてサイドに隙間を作ります。
その隙間を維持したまま、そっとマイナスドライバーを差し込みます。
マイナスドライバーの先端がカセットの端子に触れてしまわない程度に奥まで差し込みます。
ここの差し込みが浅すぎるとマイナスドライバーが外れてしまってうまく蓋を外すことができません。
何度もこじこじすると傷つけてしまう恐れがあるので慎重かつ大胆に作業しましょう。
カセットの下蓋側はでっぱりが付いていますので写真の位置あたりまでしか差し込めません。
これ以上、上に移動するとでっぱりの部分にダメージが入ってしまうので、マイナスドライバーの位置はここまでに留めておきます。
カセットの横のツメがある場所の付近を親指でグイッと押し込みつつ、マイナスドライバーの柄のほうを上に持ち上げます。
上手くいくとパキッと音がしてツメが外れます。ツメが折れたときも同じ音がするので、この瞬間は緊張します。
ツメが外れない場合はマイナスドライバーの柄を一度、下方向に動かしてから再び持ち上げてみてください。
親指でカセットの横を押し込むことで、ツメにかかる負荷を若干軽減できるという寸法です。
何もしないよりはマシと言った程度ですから、この方法でもツメが折れるときは折れます。
続いて反対側のツメを外します。
片方のツメが外れたあとは、それほど力を入れなくても簡単に隙間を作ってマイナスドライバーを差し込むことができるようになっています。
先ほどと同様の手順で横のツメを外しましょう。
横のツメが両方とも外れたら上のツメを外します。
と言っても、上のツメの外し方は簡単で、カセットの上蓋の端子側をそっと上に持ち上げるとメキッと外すことができます。
カセットの種類や状態によっては上のツメもガッチリと噛んでいてこの方法では外れないこともあります。
何度か軽く持ち上げてみてダメだった場合は無理せず、別の方法でツメを外しましょう。
カセットの上部に開いている穴にマイナスドライバーを差し込みます。
そしてマイナスドライバーの柄のほうを上に持ち上げるとツメが外れます。同様の手順で上の 2 箇所のツメを外すと完了です。
無事、ファミコンカセットを分解することができました。
実際にファミコンカセットを分解している様子です。動画ではスムーズに分解できていますが、練習のときにスーパーマリオブラザーズのツメを飛ばしてしまいました。
ファミコンカセットの電池を取り外す
続いてカセットの基板に搭載されているコイン電池を取り外します。
分解作業に比べると非常に簡単。ハンダ吸い取り器を使ってコイン電池を固定している金具を取り外すだけです。
コイン電池と金具は再利用しないので、取り外す過程で折れ曲がったりしても気にする必要はありません。
電池の付近に長時間ハンダごてをあてるのは危険です。上手く外れないときは一度ハンダごてを離して落ち着いてから作業するようにしましょう。
ハンダ吸い取り器でハンダが取れないときは、コイン電池をペンチでグイグイッと何度か捻ると電池と金具が分離します。
その状態で金具をペンチで引っ張りながら裏からハンダを溶かしてやると外れやすいです。
金具が外れたらハンダ吸い取り器で残ったハンダを吸い取って綺麗にしておきます。
ファミコンカセットの基板に電池ホルダーを取り付ける
今回用意した電池ホルダーは、端子の位置はファミコンカセットの基板にピッタリ合うようになっていますが、端子が横に寝ているため、基板に取り付けるためには端子を起こしてやらなければなりません。
Amazon のレビューによるとこの端子が非常に折れやすいものもあるとのことですから、なるべく慎重に作業していきましょう。
もう一つ注意点ですが、この電池ホルダーの金具は外れやすくなっていますので、端子を曲げるときはコイン電池を装着した状態で作業するのが良いと思います。
角度が浅めでも基板に取り付けるときにある程度は調整できますので、折り曲げすぎにだけは気を付けてください。
端子を起こしてやるとこのような感じになります。
この電池ホルダーは 5 つ使用しましたが端子が折れることなく、すべて正常に使用できています。
Amazon レビューにあるような低品質のものを購入してしまった場合は、折り曲げ作業をより慎重に行う必要がありそうです。
基板に電池ホルダーを載せてハンダ付けします。
プラス端子とマイナス端子は穴の大きさが異なるため、逆向きに取り付けてしまうことはないと思いますが、念のためプラスとマイナスの向きには注意してください。
電池ホルダーを基板に載せるところまではコイン電池を装着した状態のほうが作業しやすいですが、ハンダ付けのときは安全のためコイン電池を取り外しましょう。
電池ホルダーの取り付けが完了しました。
見た目としては初めから電池ホルダーが付いている仕様だったかのように違和感なく馴染んでいると思います。あとは蓋を元どおりに閉めて完成です。
その後、セーブした状態で 3 日間放置しまして、さらにカセットに軽い衝撃などを与えたりしてみましたがセーブデータは無事でした。
とは言え、電池ホルダーを使っている仕組み上、カセットに強い衝撃を与えると電池が外れてしまう恐れがありますから、その点だけは十分にご注意ください。
新しい電池でプレイするファイナルファンタジー 3 は格別ですね。
セーブができるようになったので、安心してひかりをとりもどす旅に出られそうです。
そうそう。リセットボタンを押しながら電源スイッチを切るというのも忘れないようにしましょう。
スーパーファミコンカセットの電池を交換する
続いて、スーパーファミコンカセットの電池を交換してみます。
電池はファミコンカセットと同様、コイン形リチウム電池 CR2032 となっており、電池ホルダーもそのまま同じものが使用できます。
スーパーファミコンカセットはファミコンカセットと違って 2 本のネジで閉じられているだけなので簡単に分解できてしまいます。
ところで、スーパーファミコンカセットのネジは特殊な形状のネジになっているので、特殊ネジ用ドライバー DTC-20 が必要です。
エンジニア 特殊ネジ用ドライバー ラインヘッドネジ LHネジ用 DTC-20
エンジニア(ENGINEER)
Amazon で探す
楽天市場で探す
DTC-20 はゲームボーイのカセットで使われているネジなどにも使えますので 1 本持っておけば色々と役に立ちます。
分解すると基板はこんな感じで電池の位置もファミコンカセットの基板と似ています。
ハンダ吸い取り器を使って電池を取り外します。
電池に長時間ハンダごてをあてるのは危険ですから、慎重かつ素早く作業を行いましょう。
今回、使用したカセット「真・女神転生」はハンダが取れやすくてスムーズに作業できたのですが、後日試した「ファイナルファンタジー 6」はちょっと固かったです。
電池ホルダーの端子を折り曲げて基板に取り付けます。これは先ほどご紹介したファミコンカセットと同様の手順ですから割愛させていただきます。
無事、スーパーファミコンカセットの電池を交換することができました。
電池を交換する過程で一時的に電池を取り外してしまいますから、当然セーブデータは消えてしまうものだと思っていましたが、作業を短時間で行ったためか真・女神転生のセーブデータは消えずに残っていました。
結論
ファミコンカセットの電池を交換するというお話でしたが、やはりカセットを分解する工程がポイントですね。
なるべくツメを折らないように注意して慎重に作業を行いましたが、ツメが折れるかどうかは運の要素も結構あります。みなさんの大切なファミコンカセット、ツメが折れないことを心よりお祈り申し上げます。
そう言えば、電池交換後もセーブデータが残っていた真・女神転生ですが、予備知識なしでプレイしており、主人公は魔法が使えないとも知らず魔力を上げまくっていたので、もう一度初めからやり直したほうが良さそうです。