以前にジャンク屋さんで購入した綺麗なファミコンですが、一通り AV 化の実験を行っただけで、その後は普通に RF スイッチでテレビに映して遊んでいました。
というのも、本格的に AV 化するとなると本体に穴を開けて RCA ジャックを取り付けるなどの加工が必要となるため、綺麗なファミコンにそのような改造を施すのは気が引けていたのです。
そんなとき、ジャンク屋さんの 1 円ボックスの中に使えそうなケーブルを発見したので、今回はそれを使って本体に穴を開けることなく AV 化を行ってみようと思います。
目次
まずは準備してみる
謎のケーブル
携帯電話か何かの専用ケーブルだと思いますが、普通の AV ケーブルと違って 3 本のケーブルが途中で 1 本の細いケーブルにまとめられています。
ジャンク屋さんではこのような用途不明のケーブルは投げ売り価格で販売されていますので容易に入手できると思います。
AV 化の基板
前回の実験で割と画質の良かった「バックアップ活用テクニック PART 29」 (以下、バッ活) という雑誌に掲載されていた情報をもとに作った基板を使用します。
写真の基板は前回の実験で作成したものですが、余白がありますのでこの部分に上で紹介した謎のケーブルを接続しました。
音声出力は赤と白に接続しますが、ファミコンはモノラルなので音声信号が 1 つしか取り出せません。
疑似ステレオ化という方法もあるようですが、私は本来のファミコンの音を楽しみたいので採用しませんでした。
その他
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LED
ファミコンの電源がオンになっているときにランプが光る仕組みを実装します。青なんかもかっこいいですが、ピンクを用意しました。
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電解コンデンサ
音声信号の出力で直流が漏れているのをカットするためのカップリングコンデンサとして使用します。47uF のものを 1 つ用意しました。
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抵抗
音声信号のレベル調整と出力先での短絡保護のために 180Ω を 1 つ、コンデンサの放電用に 1kΩ を 1 つ用意しました。
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積層セラミックコンデンサ
縦縞対策のパスコンとして使用します。2uF のものが手元になかったので今回はフィルムコンデンサで代用しました。その他、多数のパスコンはチップ積層セラミックコンデンサを使用しましたが結果的にはあまり効果がありませんでした。
基板を実装してみる
ファミコン本体に基板を収めます。今回使用したファミコン本体は前回同様、前期型と呼ばれるもので型番は HVC-CPU-07 です。
基板を接続する
基板を収める位置はどこでも良いと思いますが、写真の位置にピッタリ収まりました。
ケーブルは写真の左側から迂回させると蓋が閉まらなくなるので、若干見栄えが悪くなってしまいますが真ん中から本体基板の上を通過させました。
本体基板側の接続位置は前回の記事でも触れましたが、今回は音声信号も取り出しますのでバッ活の記事を参考に以下のような位置に接続しました。
音声を取り出す
音声信号は上の写真ですとカセット端子の 46 ピン (基板上の 45 と記載されている部分の左下) から取り出します。
バッ活の記事では音声信号をそのまま使用していましたが、これは直流が流れているので危ないという情報をみかけましたので、実際にテスターで調べてみると 2 ~ 3V の直流が漏れていました。
ネットで調べてみたところ直流カットのために音声出力の手前に 47uF のコンデンサと 1kΩ の抵抗を付ける例がありましたが、試してみたところ音量が非常に小さくなってしまいました。
ファミコンのロットによって音声信号のレベルが異なるという情報もありましたので、抵抗の値は自分の耳で調整することにして手元にあった 180Ω を使用しました。
R1 は音声信号のレベル調整と出力先での短絡保護、R2 から GND は C1 の放電用ということでこんな感じの回路にしてみました。
ファミコンの基板から AUDIO IN に、AUDIO OUT から赤と白のケーブルに接続して音声出力の回路は完成です。
ケーブルを出す
本体に穴を開けずに AV 化ということで、背面にある [TV < > GAME] の隙間からケーブルを出しました。スイッチを取り外す必要はありません。
また、今回使用したような細いケーブルではなく普通の 3 本線のケーブルでも細めのものなら隣の [CH1 < > CH2] の隙間から出すことができそうです。
本体に穴を開けないという都合上、ケーブルが本体から直接生えていますので取り回しが少々不便にはなってしまいます。あと、ケーブルの位置的に発熱による影響が懸念されますが今のところ問題なく使用できています。
ランプを付ける
別になくても良い要素ですが、電源がオンになっているときの状態を分かりやすくするために電源ランプを付けてみました。
LED は本体基板の VCC と GND に適当な抵抗を挟んで接続します。
電源ランプは電源スイッチの隣に穴を開けて設置している例を見かけますが、今回は本体に穴を開けないので、隙間があって光が漏れそうなこの位置にしました。
こちらも発熱による影響は心配ですが、さすがに LED が溶けるほど発熱するとも思えませんから大丈夫でしょう。
縦縞対策をしてみる
ファミコンを AV 化すると必ず発生するのが縦縞問題です。
上の写真は前回、バッ活の回路を使用して AV 化したときにプレイしたスーパーマリオブラザーズですが、縦縞が若干あるものの気になるというほどでもないと思っていました。
しかしながら今回、試しにドラゴンクエスト 1 を起動してみたところ、オープニング画面での縦縞がかなり気になるレベルだったので縦縞対策を実施しました。
縦縞対策なし
ドラゴンクエスト 1 のオープニング画面ですが、よく見ると細い縦線と太い縦線が交互に縞模様となっています。
PPU の 21 ピンをカットする
縦縞対策の定番とされている方法ですが、PPU の 21 ピンをカットしてその隣にあるトランジスタのベースに直結します。
トランジスタは一度取り外し、ベース以外の足を折り曲げて寝かせた状態で取り付けるとベースの足に接続しやすくなります。
ちなみに写真は前期型の基板です。後期型の基板はトランジスタの足の位置に注意してください。
横から見るとこんな感じです。
PPU の 21 ピンをカットしてしまうともう後戻りはできません…。
念のため接触しないように基板側はハンダを綺麗に除去して残骸の足は抜いておきました。
浮かせたトランジスタのベースの足の下にはビニールテープを貼って絶縁しておきました。
本体に穴を開けない方針なのに本体基板に手を下してしまうのはいかがなものか?と思ってしまいますが、白いファミコン本体を手に入れるよりも黄ばんだファミコンの基板を手に入れるほうが簡単ですからね。
さて、PPU の 21 ピンカットの効果はどうでしょうか?
ほとんど変化なし。
ネットで調べた情報によると PPU の 21 ピンカットだけで縦縞が除去できる場合とそうでない場合があるようで、ひとまず次の対策に入ります。
パスコンを追加する
PPU の電源に 2uF ぐらいの積層セラミックコンデンサをパスコンとして接続してやることで先ほど行った PPU の 21 ピンカットの効果が現れるという情報がありましたので試してみます。
とは言っても、2uF の積層セラミックコンデンサなんて手元にないのでフィルムコンデンサで代用してみました。
無駄に耐圧 250V のコンデンサなのでデカイですが、裏蓋は閉まりました。
ここにパスコンを追加するのが一番効果的というウワサですから期待が膨らみますね。
さて、パスコン追加の効果はどうでしょうか?
縦縞が薄くなってる気がする。
割と目立っていた細い縦線が薄くなったおかげで、全体的にも縦縞がほとんど気にならないレベルになったように思います。
さらにパスコンを追加する
もともとパスコンが付いている部分にさらにパスコンを追加することで縦縞が薄くなるという情報がありましたので試してみます。
丸印の位置に適当にパスコンを追加してみました。
調子に乗ってたくさん付けましたが、写真の右下の矢印部分にパスコンを付けると音声がこもったような感じになってしまったので最終的には取り外しました。
さて、さらなるパスコン追加の効果はどうでしょうか?
特に変化なし。
そういうわけで PPU の 21 ピンカットと普通にパスコン追加だけで効果があって、それ以外のパスコン追加はほとんど効果がないような結果でした。
結論
前期型の中でも多く出回っているという HVC-CPU-07 を使って、バッ活の記事を参考に AV 化を行い、さらにネットの情報を参考に縦縞対策を行ってみました。
結果的にはドラゴンクエスト 1 のオープニング画面の縦縞は軽減されましたし、スーパーマリオブラザーズでは以下のとおりずいぶん綺麗になりました。
しかしながらバッ活の AV 化回路ですが「バックアップ活用テクニック 総集編」に掲載されている回路では一部のソフト (星のカービィなどの明るい画面) で表示が乱れることがあるという情報をみかけました。
今回、記事を書くにあたって参考にしたのはバッ活総集編ではなく、「バックアップ活用テクニック PART 29」です。
バッ活 29 は AV 化回路を本体外部に実装するという内容でしたが、バッ活総集編では回路を本体内部に内蔵するためにバッ活 29 の回路から部品を削っているとのことです。
残念ながら星のカービィを持っていないので、バッ活 29 の回路で画面の乱れが発生するかどうかは検証できていませんが、ジャンク屋さんで星のカービィを安価で見かけたら購入して実験してみようと思います。
なお、バッ活総集編の記事中にはファミコンのロットによっては画面が乱れることがあるかもしれないという旨の注意書きがありましたので、今回の記事で試した方法につきましても同様、動作保証はないということをご了承ください。
- ロットによって本体が白いものと黄ばみやすいものがあるので白いものは確保
- 縦縞対策は PPU の 21 ピンをカットするだけではダメなときもある
- その場合はパスコンを追加することで改善できることがある
- 星のカービィで画面が乱れなければ幸せになれる
追記
記事を書いた当時は初めて AV 化に挑戦したということもあって、前期型のファミコンはこういう画質なのだろうと思っていましたが、その後、後期型のファミコンを AV 化する機会があり、その画面の美しさに驚きました。
参考 後期型のファミコンで AV 化と縦縞対策をして遊んでみる
後期型ファミコンをトランジスタを使わない回路で AV 化 + 縦縞対策
そのとき参考にさせていただいたサイトに、前期型のファミコンでも後期型と同様、トランジスタを使用せずに実装する方法が記載されており、バッ活の回路をはぎとって再挑戦してみました。
トランジスタを使わない回路で AV 化
映像信号の回路はトランジスタを使わないのでとても簡単です。
参考サイトによりますとコンデンサの容量や抵抗値は任意とのことなので、今回の実験でうまくいった値で回路図を掲載しておきます。
この回路自体は前期型でも後期型でも共通ですが、映像出力の箇所にこの回路を接続するだけで良かった後期型とは異なり、前期型の場合は本体基板にひと手間必要です。
このような感じで本体基板の VIDEO とプリントされている箇所に抵抗とジャンパー線を取り付けます。
参考にさせていただいたサイトの情報ですと抵抗値は任意とのことなので、今回はたまたま手元にあった 100Ω を使用してみました。
ちなみに VIDEO の箇所に配線されていたバッ活の回路は除去済みです。
あとは映像信号と音声信号を取り出すだけです。
音声信号と GND はバッ活の回路のままでも問題ないのですが、参考サイトにならって映像信号と音声信号を上記の箇所から取り出しました。
それでは実験結果をどうぞ。
前期型ファミコンをトランジスタを使わない回路で AV 化 + 縦縞対策
色合いが良くなってる気がする!
後期型と比べると空の色は少し異なりますが、バッ活の回路と比べると断然こちらのほうが発色が良い感じです。
真ん中の映像がこの実験で得られた画質です。
トランジスタを使用しない回路ということで、なんとなく手抜き感があって画質が悪いのではないかと思っていましたが、予想に反して非常に良好な画質と言えるのではないでしょうか。
それに当記事においてパスコンを複数追加している効果もあってか、AV 化した後期型と比べて前期型のほうがジャギーが目立たないソフトな画質で見やすく感じました。
なお、音声出力回路や縦縞対策につきましては追記においても変更することなく、当時の記事のままの状態で問題なく使用できています。
星のカービィのタイトル画面で動作確認
記事中で少し触れましたが、AV 化の方法によっては一部のカセットで画面が乱れることがあるとのことで、その代表的な例が「星のカービィ」のタイトル画面だそうです。
今回、ようやく星のカービィのカセットを手に入れることができましたので、検証した結果をお知らせします。
起動時の白が多い画面
バッ活の回路はすでに除去済みだったので、記事中の追記でご紹介した「前期型ファミコンをトランジスタを使わない回路で AV 化 + 縦縞対策」のファミコンを使用しましたが、白の多い画面でも問題なく動作しています。
タイトル画面
タイトル画面も鮮明で縦縞もほとんど目立ちません。長い道のりでしたが、無事、星のカービィでの動作確認も取れ、満足度の高い映像が得られました。
ファミコンのカスタマイズにあたって、記事中でも何度か紹介させていただきましたが、ファミコンのカスタマイズに挑戦され、有用な情報を公開してくださっている先人様に感謝いたします。