今回ご紹介するのはベース用のエフェクター ZOOM 3000B です。
私はギター用のエフェクター ZOOM 2100 を学生時代に定価の 13,500 円で購入しまして現在でも普通に使えていますが、これは低価格でそれなりの音質といった感じの製品でした。
ZOOM 3000 はギター用のエフェクターですが、 ZOOM 2100 と同じく 1998 年頃の製品のようで定価 18,500 円となっていますので、ZOOM 2100 の上位版のような位置づけでしょうか。
ZOOM 3000B (以下、3000B) については情報がほとんど見つからなかったのですが、ギター用のエフェクター ZOOM 3000 をベース用にした製品のようですね。
ZOOM 3000B のジャンク品
カセット MTR でライン録りするときにギターやベースなど出力インピーダンスの高い機器を直接接続するとノイズや歪みが増えてしまいます。
ベース用のエフェクターってギター用と比べると少ないような気がしますが、そういったシーンでインピーダンスを下げて良い音で録音したいときに役立ちます。
ジャンク屋さんで見つけた 3000B は「動作 NG」と書かれており、お値段は税込み 550 円でした。
修理できなかった場合、大きなゴミになってしまうわけですから、動作しないと分かっているものに 550 円はちょっと高いかなとも思いました。
しかし、こういった製品の故障はアダプター接続部の接触不良やはんだクラックが原因ということが多いので、簡単に修理できてしまう可能性も十分にあります。
清掃してみる
それでは状態を見ていきましょう。
ホコリも積もっていますし、操作パネルの部分がベコベコになっていて非常に状態が悪そうに見えますが、実はこれ保護フィルムがついたままになっています。
普通は動作確認の後にクリーニングなどを行うものだと思いますが、状態の悪いジャンク品を磨いてピカピカにする工程は楽しいですし、動作しなかった場合でも何とか修理してあげようという愛着がわくので、私は動作確認前に清掃します。
ボタンやダイヤル、フットスイッチなどに目立った傷もありませんから、保護フィルムを剥がしてクリーニングすると新品のように綺麗になりました。
アダプターを接続してみたところ、すぐには電源が入らなかったのですが、接続部分をコネコネ動かすと電源が入りました。
これは後ではんだを盛れば改善できそうです。
いやぁ、簡単に修理できそうで良かった、と思ったのもつかの間。いざ、入力端子にベース、出力端子にヘッドホンを接続してみると「プギャー」という大音量のノイズが発生。
これはどうやら本格的に壊れているようです。
分解してみる
裏側のネジを外すだけで簡単に分解することができました。
アダプターを動かすと電源が入ったり落ちたりするので、とりあえずはんだを盛りなおして修理しておきます。
通常の操作は問題ないのですが、どうも EFFECT か DLY/REV のいずれかをオンにすると大音量で発振のような音が発生するようです。
ネットで調べてみましたが、エフェクターの修理となるとコンデンサーの交換かオペアンプの交換ぐらいしか情報がありません。
見た感じ、破裂していたり膨らんでいたりするコンデンサーはありませんし、はんだがクラックしていそうな箇所もなさそうです。
ダメモトでいくつかの箇所のはんだを盛りなおしてみましたが効果はありませんでした。
となると、オペアンプやエフェクト用のチップの故障が疑われますが、その場合は部品の入手も困難ですし、そこまでして修理する元気もないのでお手上げです。
一応、EFFECT と DLY/REV さえ使わなければ、普通のアンプシミュレーターとしては使えるわけなので、550 円だし諦めるかなと思ったのですが、誤ってエフェクトのスイッチをオンにしてしまうと耳を傷めてしまいかねない大音量のノイズが発生するわけですから使う気にもなれません。
修理してみる
さてどうするか…。ここから先は完全に壊れてしまうことを覚悟した上で、なおかつ危険を承知した上での作業となります。
この記事は安全を確保した上で撮影を行っています。電源を入れた状態での分解修理は火災・感電の危険がありますのでやめましょう。
最後の手段、電源を入れた状態でヘッドホンを接続し、基板に素手で触れてみてノイズが変化する場所を探す作戦です。
電源は 9V ですし、乾燥肌なので感電の危険性は低いと思いますが、チップが熱くなっていたりすると火傷の恐れもありますから慎重に作業を行います。
ZFX-2 と書かれているチップの付近に触れたときに少しだけノイズが低減したような気がします。
ZFX-2 はエフェクト処理を行うための DSP チップとのことなので、この辺りが怪しいですね。
ここから先はテスターでチップの足を 1 本ずつチェックしていき、ようやく矢印の箇所を結ぶパターンが断線しているのを発見しました。
90 年代のチップとは言え、チップの足の細さは剛毛な髪の毛ぐらいの細さです。
普通の電線では太すぎるため、電子工作用のより線を剥いて中から電線の束を取り出し、その中の一本を使用してチップの足と基板にはんだ付けします。
基板側はそのままでははんだが乗らなかったので、電線を穴にとおし反対側からはんだ付けしました。
この状態で動作確認してみたところ、大音量のノイズは消え、EFFECT と DLY/REV の機能がきちんと使えるようになっていました。
配線が剥きだしだと、衝撃を与えたときに外れてしまう恐れがあるので仕上げにホットボンドで固定しました。
これで修理は完了です。
試用してみる
3000B には 45 種類のエフェクトが内蔵されており、最大で 9 種類のエフェクトを組み合わせることができるようです。
コンプやディストーション、アンプシミュレーター、イコライザーなどの基本的なものからディレイやリバーブの空間系までひととおり揃っているので、これひとつあれば多彩なサウンドを楽しめそうです。
2 フィンガー奏法で演奏したものをスラップ奏法のような音にできる機能や、ベースの音からピッチを検出して内蔵の音源を使ってシンセサイザーとして音を鳴らす機能など、斬新な機能も搭載されています。
メトロノームやチューナーなど、ちょっと便利な機能も搭載されているので普段の練習や MTR を使った録音にも使えそうですね。
プリセットは実用的なものから奇抜なものまで幅広く用意されていて、適当にポンポン切り替えて遊ぶだけでもとても楽しいです。
肝心の音質はというと、今どきのマルチエフェクターやソフトウェアのエフェクターと比べるとどうしても劣ってしまいますが、思ったより悪くない印象です。
搭載されているエフェクト処理の DSP チップ ZFX-2 というのは、実は ZOOM 2100 でも使われているので、正直、音質には期待していませんでした。
2100 では ZFX-2 × 1、3000B では ZFX-2 × 2 ということで、チップの数が音質に影響するのかどうかは分かりませんが、仕様上のサンプリング周波数は 2100 が 31.25kHz、3000B が 39.0625kHz ということなので 3000B のほうが高音質と考えて良さそうです。
結論
DAW で制作するデジタルロックのような解像度の高い楽曲に合わせると、こういった 90 年代のデジタルエフェクターの音は若干、浮いてしまいます。
宅録やライブハウスで大音量で演奏するときなど、音質に繊細さが求められない状況下であれば、ちょっと面白いガジェットとして使えるのではないでしょうか。
個人的には、3000B のシンセサイザー機能は飛び道具としてかなり使えそうな気がしています。
というわけで、久々のジャンク品の紹介で、しかも修理がうまく行ったという珍しいケースではありますが、そもそも私はベースを弾けませんでした。
ZOOM ズーム ベース用 マルチエフェクツ・プロセッサー B1X FOUR 赤
ZOOM(ズーム)
70 種類以上のエフェクトとアンプモデル、ルーパー、ドラムマシンを搭載。