他のかたが投稿されているジャンク品を修理する動画などを見ていると、ついジャンク屋さんに行きたくなってしまいます。
当サイトではジャンク品を修理したり壊したりしていますが、ここ最近は外出自粛期間中ということで新しいジャンク品を仕入れに行くことができていません。
最後にジャンク屋さんを訪れたのはずいぶん前だったような気がしますが、そのときはお客さんが少なくて、商品もほとんど入れ替わってないような印象でした。
今回はそのときに購入した 4 トラックカセット MTR、YAMAHA MT50 を動作検証、修理していきたいと思います。
自粛ムードの中ではありますが少しでもご自宅で楽しんでいただけるよう、いつもどおりの雰囲気で記事を書かせていただきたいと思いますので、どうかご了承くださいませ。
YAMAHA MT50 のジャンク品
今回の商品はこちら。カセット MTR、YAMAHA MT50。動作未チェック品で、お値段は税込み 550 円。
ビニールでぐるぐる巻きにされているので、カセット部分が開閉できるかなどのチェックはできませんでした。
カセットデッキなどのジャンク品ですと、カセット部分が開きっぱなしなのをテープで閉じた状態で販売していることが良くあります。
掃除する前の状態ですが、写真だと綺麗に見えますね。
実際はホコリっぽいですし傷もありますし、1 と 2 トラックのパンのノブと音量のフェーダーの白いラインが黄ばんでいます。3 と 4 トラックは普通に白いのでちょっと気になります。
ビニールを剥がしてみました。
カセット部分のフタはバネが弱くなっていてボタン一発では開かないか、ヨロヨロと開くぐらいですが、とりあえず開閉はできそうです。
調査してみる
4 トラックカセット MTR と言っても性能は様々です。
前回、ご紹介した Fostex X-12 は低価格帯の製品ということもあって性能として特筆すべき点はありませんでしたが、YAMAHA MT50 はどうでしょうか。
参考 4 トラックカセット MTR、Fostex X-12 で遊んでみる
メーカーのサイトに YAMAHA MT50 の商品情報は見当たらなかったのですが、実際に使ってみた感覚として特徴的なポイントを挙げてみます。
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テープシンクに対応
トラック 4 に FSK 信号を録音することで外部の MIDI シーケンサーやドラムマシンと同期することができます。
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パンチイン・アウト録音に対応
フットスイッチを使ってパンチイン・アウトの操作ができます。もちろんフットスイッチを使わず手動でも可能です。
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ピンポン録音に対応
音質を犠牲にしますが録音済みのトラックを 1 つのトラックにまとめることができるので、4 トラックの限界を超えていくつでも楽器を重ねることができます。
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AUX センド・リターンに対応
ミックスダウンのときにエフェクターなど、外部の機材を経由してエフェクトをかけることができます。AUX のリターン端子は外部入力のステレオ端子としても使えます。
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dbx ノイズリダクションを搭載
カセットテープでは最強と言われている dbx ノイズリダクションが搭載されています。dbx というのは簡単に言うと、録音時に限界ギリギリの大きな音に近づけて記録し、再生するときに元の音量に戻すことで相対的にノイズの量を減らす感じの仕組みのようです。
ノイズリダクションの効果は高いものの、再生する機材が dbx に対応してない場合、爆音になってしまうという欠点があるとのことです。
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カセットテープはハイポジ、90 分以下のみ対応
ノーマルテープやメタルテープは使わないでくださいとのことですが、一応、ダイソーで購入したノーマルテープでも問題なく使用できています。
カセット MTR としてはハイスペックだと思います。テープシンクに対応しているので、MIDI クロックのスレーブになれる DAW と連携したりもできて面白そうです。
一つ、残念だったのはミックスダウンのときにトラック 1 ~ 4 の入力端子に楽器などを接続できない点です。
Fostex X-28H ですとミックスダウンの段階でもトラック 1 ~ 4 の入力端子でリアルタイムに楽器を重ねることができたのですが、YAMAHA MT50 ではできないようです。
参考 カセット MTR、Fostex X-28H をキレイにする
一応、AUX センド・リターンの端子を使えばできることはできるので、がんばればなんとかなる気もします。
確認してみる
ジャンク品は動作確認する前までの段階がひとつの楽しみです。
動作未チェック品は動かないことを確認してしまった時点でただのゴミになりますから、購入してから通電するまでの状態はシュレディンガーの猫。
電源、オン!
はい、電源は入って再生はできるけど巻き戻しや早送りができません。
残念ながら壊れていました。
巻き戻しと早送りは少しだけ反応があるものの空回りという感じでカセットが 1 ミリぐらいしか回転せず、すぐに止まってしまいます。
分解してみる
分解は簡単。裏面のネジを外すだけでパカッとフタが開きます。
コンデンサーがポンポン乗っかっていてディスクリート感があるけどちょっと安っぽそうな、古き良き時代のあの感じ。
カセットテープが回転しない場合、原因のほとんどはゴムベルトの劣化でしょう。
すぐに目につくのはテープカウンターにつながっているゴムベルトです。
このゴムベルトはテープの回転とテープカウンターをつないでいるだけなので、劣化していても再生には影響がないはずです。
しかし、他のゴムベルトは見当たりません。
操作ボタンからつながっているパネルの部分の数本のネジを外せばモーターも含め、パネルごとごっそり裏返すことができました。
裏面にはモーターから直接つながっているゴムベルトがあり、カセットテープの回転と巻き戻し・早送りの操作を伝える役割をしているようです。
カセットテープを回転させるための大きなゴムベルトはまだ元気でしたが、巻き戻し・早送りの操作を伝える小さいゴムベルトはべローンと伸びていました。
この小さいゴムベルトを交換すれば直るかもしれません。
手元にゴムベルトがなかったので、輪ゴムで代用してみたのですが数日経過すると輪ゴムが伸びてしまうようで、完全な修復はできませんでした。
修理してみる
仕方なく、Amazon で修理用のゴムベルトの福袋といった感じの商品を購入しましたが、この商品は様々なサイズのゴムベルトがランダムで入っているというものなので、運が悪ければ使い物にならないかもしれません。
サイズや太さはカセットウォークマンなどに使えそうな小さめのものから、ビデオデッキに使えそうな大きなものまで様々です。
品質は若干ムラがあるものの再生速度に影響が及ぶほどでもなさそうなので、価格の割には良さげです。
定規を使ってもとのゴムベルトの直径を計測し、購入したゴムベルトで近いサイズのものがあるか確認してみました。
もとのゴムベルトの直径
72mm のものは再生時に使われるゴムベルト、37mm のものはテープカウンターに使われるゴムベルトです。
問題の巻き戻し・早送りに使われるゴムベルトは、すでに伸びきってモーターから外れており、39mm になっていました。
新しいゴムベルトの直径
再生やテープカウントで使われるゴムベルトは問題なさそうでしたが、せっかく購入したのでついでに新しいものに交換しておきます。
巻き戻し・早送りに使われるゴムベルトは正常な状態の直径が分かりませんが、きちんと引っかかるサイズの 35mm にしました。
ゴムベルトのサイズはゆるすぎてもきつすぎてもダメですが、試してみた感じだと取り付けたときにたるまない程度であれば数ミリぐらいの誤差は大丈夫っぽいです。
演奏してみる
すべてのゴムベルトを交換したところ、無事、巻き戻し・早送りが動作するようになり、心なしか再生時のピッチが安定したような気もします。
早速、YAMAHA MT50 を使って遊んでみました。今回は TR-909 のサンプルを使って、ドラムとベースが特徴的なテクノっぽいインスト曲を作ってみました。
タイトルは「desktopmusik」ということで、YAMAHA MT50 の音量メーターがピコピコ動くところや、KORG monotron DELAY の LED がピカピカ点滅するところ、意味の分からない mini テルミンの演奏などが見どころの机上の音楽です。
実は前回、大人の科学の mini テルミンの記事で動画の撮影に失敗していたので、改めて動画の中で少しだけ mini テルミンを使ってみたというわけなのですが、その魅力が伝わることはなさそうな演奏しかできませんでした。
結論
YAMAHA MT50 の音質ですが、dbx ノイズリダクションはスゴイ!
以前、ご紹介した Fostex X-28H にはドルビーノイズリダクションというシステムが搭載されていましたが、dbx ノイズリダクションのほうが効果は大きいようで、ノイズはまったく聞こえません。
しかしながら、仕組み上、ダイナミックレンジが失われてしまうという欠点があるとのことで、確かに音楽的にはちょっとノッペリしたサウンドになってしまったようにも思います。
ただ、4 トラック MTR ということを考慮すると、高音質でメリハリのある音はダイナミックレンジをさほど気にする必要のないバンドサウンドのような音楽に向いてそうです。
個人的には、ちょっとサーッってノイズがして、テープも時々ビロビロ言うぐらいの劣化した音のほうが好みではありますが、YAMAHA MT50 は、あまり出来の良くない楽曲をバキっとさせるテープ・コンプのような用途でも結構使えそうな気がしました。
以上、なげやりでした。
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