音が出ない卓上レコードプレーヤー COLUMBIA GP-11 を修理、改造してみる

音が出ない卓上レコードプレーヤー COLUMBIA GP-11 を修理、改造してみる 1

ジャンク屋さんで見つけた COLUMBIA の レコードプレーヤー GP-11、「音が出ません」とのことで 550 円でした。

修理できなかったら 550 円のでっかいゴミになってしまうわけですが、音が出ないだけなら何とかなりそうな気がしたので、思い切って購入してみました。

上部の蓋に少し擦り傷があるものの、状態はとても良さそうです。

音が出ない卓上レコードプレーヤー COLUMBIA GP-11 を修理、改造してみる 2

作りは割と安っぽい感じで、オーディオ機器ではよく見かける、MDF っぽい素材に木目調のシールが貼られているヤツです。

木目シールが少しズレていてパネルの角の部分がプニってなっています。左右の角、両方にこのズレがあるので製造工程で発生したものだと思いますが、全体的に作りが雑です。

機能としては電源兼音量のノブと、33 回転、45 回転、78 回転の切り替えスイッチのみ。外部出力端子などはありません。

音が出ない卓上レコードプレーヤー COLUMBIA GP-11 を修理、改造してみる 3

小型のレコードプレーヤーですが、きちんと LP 盤も乗っかりますし、その状態で蓋も閉まります。

EP 盤のアダプターも付属しています。78 回転の SP 盤にも対応しているのはちょっと貴重かもしれません。

操作は半自動といった感じで、手動で針を落とそうとすると自動で回転が始まります。最後まで再生し終わると自動で針が元の位置にもどり、回転が止まります。

再生終了と同時に針が上がる仕組みは、音楽を聴きながらうっかり眠ってしまっても針が守られるので嬉しいですね。

修理してみる

針にはカバーまで付いていて新しい感じですし、レコードもきちんと回転するのですが、注意書きに書いてあったとおり確かに音が出ません。

とりあえず、分解してみましょう。

単純な作りになっているので、分解も簡単。本体の左右にある 4 箇所のネジを外し、背面の上部にある 1 箇所のネジを外せば、回転台がスコンと持ち上がります。

修理してみる 1

スカスカっぷりに驚きつつ、断線しているような箇所は見当たらなかったので、スピーカーが接続されている基板上のコネクタを抜き差ししてみたら、あっけなく音が出るようになりました。

基板の品質もそれなりといった感じなので、調子が悪くなったときはとりあえず色々なコネクタを抜き差ししてみると良いかもしれません。

それから、回転数が速すぎるようだったので調整してみました。

修理してみる 2

回転数の調整は上の写真の矢印のあたりの可変抵抗を回すだけですが、その付近に回転数調整の注意書きがありましたので、これはユーザー側で調整することが前提なのでしょう。

ちなみに、そのままだと可変抵抗がケースの背面を向いていてドライバーを挿せないので背面の板を取り外すか、背面の板にポツポツ開いている穴からドライバーを突っ込む必要があります。

私は回転速度の調整ツールなどを持っていないのですが、たまたまレコードと同じ曲の CD を持っていたので、これらを同時に再生しながら耳で合わせてみました。

改造してみる

このレコードプレーヤー、卓上サイズでシンプルなのは良いのですが、安っぽいモノラルスピーカーが搭載されており、音質は非常に残念です。

この簡単さと安っぽさ (というか低価格) がウリなのだと思いますが、せっかくレコード盤を擦り減らして音楽を聴くわけですから、もう少しマシな音で聴きたいものです。

ネットで調べてみたところ、このレコードプレーヤーにフォノ出力を追加しているサイトを見つけたのですが、方法については記載されていなかったので、どうせ 550 円だし…と、壊す覚悟で実験してみました。

フォノ出力を追加する

フォノ出力を追加することで、手持ちのフォノイコライザーを使って高音質なステレオサウンドが楽しめるはずです。

まず、作業しやすいように基板と回転台を接続しているケーブルを取り外しますが、このケーブルの接続部に MM カートリッジの信号が直接来ているようです。

フォノ出力を追加する 1

カートリッジからの配線は L (HOT)、L (COLD)、R (HOT)、R (COLD)、GND の 5 本あるようなので、この部品まではステレオ信号が来ているようです。

この部品のネジを取り外して裏返してみると…。

フォノ出力を追加する 2

5 本の配線は L と R と GND の 3 つにまとめられており、L (COLD) と R (COLD) が GND に落ちてしまっています。

とりあえずこの L、R、GND にフォノイコライザーを直接接続してみたところ、一応、ステレオサウンドで音声が出力されました。

内蔵のモノラルスピーカーを生かしつつ、フォノ出力も試したい場合はここに直結で良いかもしれませんが、若干、ザラついた感じでノイジーな音質でした。

音質を改善する

MM カートリッジの信号は非常に弱いので、以下の 2 点の問題を改善してみようと思います。

問題

  1. 内蔵のアンプ回路にも信号が分配されている
  2. 先ほどの部品の箇所で L (COLD) と R (COLD) が GND に落ちている

まず、(1) ですが、先ほどの箇所に直接フォノイコライザーを接続しただけだと、レコードプレーヤー本体のアンプ回路にも信号が分配されてしまいます。

信号を無駄にしないために、切り替えスイッチで内蔵のアンプ回路かフォノ出力回路かを切り替えられるようにしたいところですが、今回は部品が無いので内蔵のアンプ回路は切り捨てます。

音質を改善する 1

カートリッジからの 5 本の配線を先ほどの部品から切り離し、ユニバーサル基板を使って延長しました。

この時点でアンプ回路には信号が行かなくなるので、レコードプレーヤー本体からは音が出なくなります。

これをフォノ出力として背面の板から取り出します。

音質を改善する 2

背面に開いている穴に RCA ケーブル (オス) とアース線をとおしました。

アース線の接続端子ですが、こんなものまでダイソーで販売されているのですね。

Y 型アースを接続することでフォノイコライザーのアース端子にきちんと接続できるようになりました。

こういった部品がない場合はアース端子のネジに配線を直接巻き付けても問題ないと思います。

どうして RCA ケーブル (オス) なの?

そういえば、カセットプレーヤーや CD プレーヤーなどは本体に RCA 端子が付いていて、自分で好きな RCA ケーブルを接続しますが、当時のレコードプレーヤーって RCA ケーブル (オス) が直接生えてましたよね。

これは、カートリッジからの信号が微弱なため、ユーザー側で勝手に長いケーブルを接続されてしまうのを防ぐためだとか、なるべく接点を減らすためだとか言われているようです。

音質を改善する 3

さて、右上の矢印の部分が先ほどの部品の箇所ですが、カートリッジからの 5 本の配線を背面のフォノ出力に配線しています。

カートリッジの GND は本体の GND に落としますが、L (COLD) と R (COLD) はここでは GND に落とさず、RCA ケーブルのマイナス側 (シールド) を使って背面から取り出します。

レコードプレーヤー本体の GND もアース線として背面から取り出します。

どうしてアース線が必要なの?

ところで、レコードプレーヤーってアース線がついていますがこれって何故必要なのか、ずっと疑問に思っていました。

一般的なオーディオ機器で使われる RCA 端子のマイナス側 (シールド) は GND と共有されていることが多いのですが、フォノ出力は RCA のプラス側を HOT、マイナス側を COLD と呼び、どちらも信号として使用するので、別途 GND の配線が必要になるんだそうです。

HOT は音声信号がそのまま流れ、COLD は HOT の信号を反転したものが流れます。

信号がケーブルの中を流れていく途中でノイズが乗るわけですが、ノイズは HOT 側と COLD 側にほぼ同じ形で乗りますよね。

信号が到達したあと、COLD の信号を再び反転させると音声の波形は HOT と同じになりますが、ノイズの波形は HOT と逆になります。

これを HOT の信号と足し合わせることで音声信号は 2 倍に増幅され、ノイズは打ち消しあってゼロになるという仕組みということで、こんなの考えた人はスゴすぎます。

鑑賞してみる

オーディオテクニカのフォノイコライザー AT-PEQ20 に接続してみました。

廉価なフォノイコライザーですが、ステレオサウンドですし、余計な回路をとおさない MM カートリッジから直の信号なので、音質は驚くほど改善されました。

ハイレゾの目指すところはアナログレコードの音質と言われていますが、こんな廉価なシステムでも CD とは比べ物にならないぐらい解像度が高く、繊細で空気感のある音質が楽しめます。

DAW で音楽を制作するときは 24bit や 32bit など、いわゆるハイレゾな音質で作業すると思いますが、いざ、CD や通常の配信サービス向けに 16bit / 44.1khz で書き出すと、その音質の差に残念な気持ちになってしまいます。

それの逆で、CD や通常の配信サービスなどで慣れた耳からすると、アナログレコードの音質はハイレゾを飛び越えて、耳からウロコがスッポーン!と飛び出すほどでした。

結論

ストリーミングで簡単に聴ける音楽は便利ですが、デカいジャケットに指先で触れ、デカい円盤を回転させ、針で円盤を摩耗しながら聴く音楽は、データだけの音楽よりも贅沢で美しく、断然楽しいものです。

CD すら終わりかけているこの時代ですが、ハイレゾの出現でアナログレコードが再び注目されているといった話もあるようです。

また、DTM 関連ですとアナログレコードのサンプリングなんかも流行っているようです。

そういった理由からかはわかりませんが、最近、ジャンク屋さんのレコードが値上がりしているのは残念です。

こんな設備でアナログレコードを語っていると怒られそうですが、普段、ストリーミングで音楽を聴いている耳からすると、550 円のレコードプレーヤーと廉価なフォノイコライザーでも「すげぇぇぇ!」と感動しました。

以上、アナログレコードで聴くサイモン&ガーファンクルのライブ盤でちょっと泣きそうになった、なげやりでした。

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